介護の気付き(日常編)

目次

・ある新米職員の話

・今から結婚式にいくというAさんの話

・「ちょっと、待ってて下さい。」という言葉

・歩くことを嫌がる利用者の話

・私の居場所がなくなった話

・私のスカーフはどこにあるの

まとめ

 

ある新米介護職員の話

Aさんが、訪問介護の仕事を始めて6ヶ月の出来事です。担当した利用者Cさんは、1年前がんの治療で入院。徐々に体調も悪化し医師からは余命宣告を告げられました。Cさんと家族の希望で残りの人生を自宅で過ごすことを決め、すぐに、訪問診療の医師、訪問看護、訪問介護、福祉用具、ケアマネジャーなどが関わり在宅支援が始まりました。訪問介護で働くAさんは、清拭や排泄介助を支援していましたが、医師や看護師、ケアマネジャーとのかかわりの中で、知識や経験が少ない自分が情けなく感じ落ち込む日々が続きました。ある日、本人と家族に「知識や経験が少ない私が担当で本当にすみません・・・。」と謝りました。Cさんが「あんたの笑顔がうれしい。いつも優しく手を握ってくれるし、汚いものも嫌な顔せず取り替えてくれて、ありがとう」という言葉にAさんは嬉しくて涙を流しました。

この事例を読んで、心温まる話とは別な見方をした場合、私は次のように感じました。医師や看護、ケアマネにもそれぞれの役割があるように、介護も専門職としての役割があるのです。Aさんの心情は理解できますが、謝ることはかえって相手に失礼な場合もあります。「知識や経験あ少ない私ですが、精一杯支援させていただきます。」と伝えた方が良かったかもしれません。清拭や排泄は直接利用者の身体にふれ全身を観察できる重要な役割を担っています。もちろん知識や経験は必要ですが、医師や看護、ケアマネと比較する必要はないのです。介護職としての関わりや視点をもって他職種と連携しチームケアを行うことが重要です。

 

今から結婚式に行くというAさんの話

Aさん80代男性は元警察署長。定年後アルツハイマー型認知症が発症し在宅生活が困難になり施設に入所されました。ある日、険しい顔つきで事務所来るなり、「早くここから出してくれ」と怒って言いました。付き添っていた介護職員は「どうしました。」と理由を聞くとAさんは「今日、結婚式がある」と言うのです。詳しく確認するとどうやら今から新郎として結婚式行くため慌てているようです。それを聞いた介護職員は結婚式がないことを説明しなんとか部屋にもどそうと必死に対応していました。しかしAさんはますます興奮してしまいました・・・。

仮にAさんがあなたの友人や知人だったら(認知症でなかったら)どうでしょう。「今から結婚式がある」と言われたら「おめでとうございます!」と祝福しませんか。傾聴や受容や共感しながら対応することが認知症ケアの基本です。この事例では訴えに対して否定される言葉や態度によりますます興奮されたと考えられます。多くの利用者の対応をしている介護職員にとって一人の利用者に時間をかけることが難しいという言い訳があるかと思います。施設全体で認知症ケアの理解と対応を学びケアすることが大切です。認知症を抱える利用者に寄り添うケアを行っていきましょう。

 

「ちょっと、待ってて下さい。」という言葉

介護職員のBさんは利用者のケア中に別の利用者から声をかけられました。Bさんは「ちょっと、待ってて下さい。」と言いました。そう言われた利用者は待っていましたが、とうとう怒ってしまいました。

施設内を歩いていると「ちょっと、待ってて下さい。」という言葉をよく耳にします。この言葉に疑問を感じたことがないでしょうか。「もう暫く、お待ち下さい。」と丁寧に言えばよいという話ではありません。「ちょっと」「暫く」「もう少し」という言葉にあなたはどれ位待つことができますか。具体的に伝えることが待つ相手には親切です。何気なく使っている言葉で相手を怒らせたり、傷つけたりするものです。抽象言葉やめ具体的言葉に変えていきましょう。

 

歩くことを嫌がる利用者の話

利用者Kさんは何かにつかまれば歩くことができているが下肢筋力低下を予防するため歩行訓練を行う計画を立てましたが、歩くのが嫌いな利用者Kさんはいつも「今日は調子が悪いから止めておきます。」と言います。職員は思うようにリハビリが行うことができず困っていました。

利用者にとって歩くだけの目的では面倒に思うかもしれません。例えば、「桜を見にいきましょう。」「コーヒーを飲みにいきましょう」など利用者の好きなことや興味があることを目的にすることで思い腰が上がるかもしれません。歩くことを表面にださず、違う目的のため歩く方が楽しいかもしれません。介護は日頃から利用者の情報を取集することは重要です。利用者の意欲をどう引き出すかはあなたの情報に隠れているかもしれません。*是非「ICF」(国際生活機能分類)を活用していきましょう。

 

私の居場所がなくなった話

施設にいるMさん(認知症)はいつも決まって食堂にある窓際の椅子に腰かけていたが、ある日Mさんが椅子につまずき転びそうになりました。これをきっかけに窓際の椅子を撤去することにしました。その後、居場所を失ったMさんはあまり部屋から出てこなくなってしまいました。

あなたはの自宅で落ち着ける場所はどこですか。リビング、それとも自分の部屋、或いは台所など人それぞれ好きな居場所があるはずです。この事例では危ないから椅子を撤去するのではなく危なくないよう環境をつくる支援を検討すべきだったのでしょう。施設での環境つくりは居室だけではありません。音楽をかけたり、花を飾ったり、一人の空間がもてるようパーティションを活用するなど居場所をつくりも大切にしてほしいです。利用者にとって施設は自宅であることを忘れてはいけません。

 

私のスカーフはどこにあるの

訪問介護で働くTさんは、整理整頓が得意な職員です。ある利用者の自宅で掃除の支援を行っていた時の話です。無造作に置かれた物をきれいに整理し終えたTさんは事業所に戻りました。翌日利用者からスカーフがないと苦情の電話がありました。すぐに利用者宅に訪問しスカーフはタンスの中に片付けたことを説明し謝罪しました。

例えば整理整頓された机で仕事をしている人から見れば、たくさんの書類が積まれた机で仕事をする人をみると「なぜ」という疑問を感じたことがありませんか。しかし不思議なことに必要な書類のありかを本人は知っているのです。また子供の部屋を母親が勝手に片付けて怒られたケースもあるように、利用者の生活を支援する中で注意が必要なことは職員の思いや考えが中心になってはいけません。あくまでも利用者主体でなくてはならないのです。この事例で一番足りなかったことは説明と同意です。そして、無造作に置かれた部屋が汚れていると思い込んだことも一つの原因だと考えられます。
今から食堂にいきましょうとベッドから車いすに乗せる介護職員。これは今から出かけるから車に乗ってと同じことです。何のために食堂にいくのかという目的の説明と同意は必要です。

 

まとめ

誰かを支援をすることは大変なことだと思うこともあります。良かれと思ってやったことが結果的に事故や苦情などにつながることもあります。私が学生のころ「男が介護の仕事なんて」と馬鹿にされた記憶もあります。しかし、誰かがやらなくてはいけない大切な仕事でもあります。介護の仕事は立ち止まっている暇などないのです。利用者やその家族、そして自分自身にとって明日が幸せな日になれるよう走り続ける仕事なのです。

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