介護の尊厳と権利 

時代の流れとともに、見直された「尊厳と権利」介護の仕事をする上で、尊厳と権利を守ることは絶対条件の一つです。しかし、高齢者や障害者の方に対して、今だに介護の仕事を行う者が、「虐待」や「詐欺」などの悪質な行為を行う者がいます。今回は、そうした悪質な行為を防止するための記事ではなく、歴史的背景と制度から「尊厳」と「権利」の重要性を理解していきます。

目次

1,法からみた尊厳と権利

2,ノーマライゼーションとはノーマライゼーションと日本の福祉背景

3,介護と権利擁護

個人情報保護

プライバシー保護

高齢者虐待防止法

身体拘束廃止

成年後見制度

日常生活自立支援事業

4,まとめ

法からみた尊厳と権利

世界人権宣言

1948(昭和23)年

第1条 すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。

 

日本国憲法

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

第25条第1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 

介護保険法

(目的)

第1条 この法律は、加齢に伴って生じる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持しその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保険医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保険医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

 

第74条第6項

指定居宅サービス事業者は、要介護者の人格を尊重するとともに、この法律又はこの法律に基づく命令を遵守し、要介護者のため忠実にその職務を遂行しなければならない。

 

ノーマライゼーションとは

ノーマライゼーションの歴史的背景デンマークやスエーデンで、第二次世界大戦まで、知的障害や精神障害がある者に対して、結婚の規制や断種大規模な施設をつくり、他の人から隔離して収容するなど差別が行われてきました。しかし、戦後になって、そのような差別を廃止し、障害者も普通の人と同じような生活ができるようにしょうと運動を起こしました。1954(昭和34)年、デンマークのバンクーミケルセンが、知的障害者(児)の親と取り組んだ家と地域での生活の保障を目指す福祉改革が、知的障害者等福祉法となり状況を大きく変え、その後、1960年代にはスエーデンやアメリカに広がり、1980年代には、日本でも次第に受け入れられるようになりました。

ノーマライゼーションと日本の福祉背景

戦後の社会福祉では、障害者や高齢者など福祉の援助を必要とする者を「要援護者」と呼び要援護者は、健常者と違ってなんらかのハンディキャップがあるり、保護・更生援護など救済してあげなければならないといった考え方でした。日本でも、大規模施設を山の中につくるなど社会的交流がなくまた、大人数の居室を設けプライバシーのない生活環境等になっていました。

1990(平成2)年 福祉8法の改正

在宅福祉サービスの法的位置づけを明確にしました。

*福祉8法:児童福祉法、身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法、老人福祉法、母子及び寡婦福祉法、社会福祉事業法、老人保健法、社会福祉・医療事業団法

1997(平成9)年  介護保険法成立

自己選択や在宅介護の重視、総合的・一体的・効率的なサービスの提供などを基本的目標とする介護保険法が成立しました。

*介護保険法の実施  2000年(平成12)年

2000(平成12)年  社会福祉基礎構造改革

ノーマライゼーションを基本とする社会福祉基礎構造改革が行われ「要援護者」から「利用者」へと法律上の呼び方を改めました。また、福祉サービスの利用、「措置」から「契約」に改めるなどの改正が行われました。

*措置制度:行政庁が職権で必要性を判断し、サービスの種類、提供機関を決定する仕組で、社会福祉施設やサービスに利用者を入所させたり、その他の処置を行うこと

2010(平成22)年 障害者自立支援法

利用者の「応益負担」から「応能負担」に改められました。

*応益負担:利用者が受けたサービスの程度に応じて負担

*応能負担:利用者の収入等の負担能力に応じて負担

2011(平成23)年 障害者基本法改正

第1条 「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがいえない個人として尊重されるものであると理念にのっとり、全ての国民が、障害の有無によってわけ隔てることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」

 

2012(平成24)年 障害者総合支援法成立

難病等の障害者の範囲に加えること「障害程度区分」を「障害支援区分」に改められました。

このように、現在では、ノーマライゼーションは、害者に限らず、高齢者や病気の人などまで拡大され、誰でも普通の人と同じように生活ができるような社会として捉えられています。そこには、バリアフリーやユニバーサルデザインなどもノーマライゼーションと密接な関係性があります。

介護と権利擁護

現在、SNS(ソーシャルネットワークサービス)の普及により、手軽に情報のやり取りができるようになりました。過去に、高齢者の髪をイタズラ、仮装のような化粧をし、ブログ等に写真を載せ、社会的問題になった事例もある。虐待の認識がなくても訴訟問題に発展します。モラル(倫理・道徳)の低下だと、一言でかたづけられません。あるアンケート調査の結果、虐待は自分と関係ないと考えている人が200人中 190人以上が答えました。また、介護はストレスが多い仕事だから、という言い訳をする者も多いのも事実です。

個人情報保護

社会福祉士及び介護福祉士法

(秘密保持義務)

第4条 社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなった後においても、同様とする。

介護福祉士が守秘義務に違反場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金但し、告訴がなければ公訴を提起することはできなません。罰金刑の場合、介護福祉士の登録は取消され、以後2年間は介護福祉士になることはできません。

介護支援専門員の守秘義務

守秘義務に違反した場合、登録が取り消され、1年以下の懲役または100万円以下の罰金

サービス提供事業所

介護保険法に基づく運営基準において、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者またはその家族の秘密を漏らしてはならないと定められています。守秘義務を違反した場合、都道府県知事による勧告、命令、指定取消しなどが行われます。

*厚生労働省から「医療・介護関係事業者のおける個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」が出されています。

プライバシー保護

個人や家族内の私事・私生活、個人の秘密が、他人から干渉侵害を受けない権利。
*個人が私的な内容に不快を感じた時点でプライバシーの侵害

高齢者虐待防止法

2005(平成17)年高齢者虐待防止法が成立     2006(平成18)年 4月1日より施行

在宅で高齢者を養護、介護する家族や親族等による虐待だけでなく老人福祉法や介護保険法の規定による居宅・施設・地域密着型サービスの事業所も範囲に入っている。

具体的内容

身体的虐待

高齢者の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること。

 

放棄・放任(ネグレクト)

高齢者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放置その他の高齢者を養護すべき職務上の義務を著しく怠ること。

 

心理的虐待

高齢者に対する著しい暴言または著しく拒絶的な対応その他の高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

 

性的虐待

高齢者にわいせつな行為をすること。または高齢者をしてわいせつな行為をさせること。

 

経済的虐待

高齢者の財産を不当に処分すること、その他当該高齢者から不当に財産上の利益を得ること。

 

身体拘束廃止

介護保険施設等の人員、設備及び運営に関する基準における身体拘束禁止規定

省令条文

サービスの提供に当たっては、当該入所者又は他の入居者等の生命又は身体を保護するため緊急やむをえ得ない場合を除き、身体的拘束その他入所者の行動を制限する行為(以下身体拘束等という)を行ってはならない。

緊急やむを得ない場合とは

1,切迫性

利用者本人または他の利用者等の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと。

 

2,非代替性

身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと。

 

3、一時性

身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること。

 

成年後見制度

利用者の権利と人権を擁護する制度

成年後見制度

認知症などで判断能力が衰えたり、なくなってしまった成年者のためその財産の管理や契約の代理をすることなどにより、身上の保護し、支援する制度

 

任意後見制度

本人の判断能力が衰える前に、受ける援助の内容と援護者(任意後見人となる者、任意後見受任者)あらかじめ契約で決めておき判断能力が衰えた後、家庭裁判所により任意後見監督人の選任がなされてから支援が始まる制度

 

日常生活自立支援事

認知症高齢者や知的障害者、精神障害者など、判断能力が衰えても契約能力がある方が、基本対象となります。サービス内容:福祉サービスの利用援助(車イスの貸出等)、日常金銭管理や銀行の通帳などの書類預かりなど。

 

まとめ

介護の仕事は、個人の健康状態、生活歴、家族構成、住環境、経済関する内容、排泄についてなどの情報や実際の介護の場面では、入浴、排泄、口腔(口の中)など介助を行います。他人に知られたくない情報や見られたくない身体の部分を情報収取し介護します。つまり、人の生命や生活に関わるため、職業倫理が必要な仕事です。もし、専門職の立場利用し、虐待など行った場合、人にも社会にも与える影響は大きいものになります。日本の法律から見ても、人権と尊厳を重視していることは明確です。ノーマライゼーションの思想は、日本の福祉に大きな影響を与え介護の柱ともいえるでしょう。介護の仕事をする上で、絶対に無視することができない「尊厳」や「権利」の知識はあっても、「私には関係ない」などの意識やモラルの低下により、人権を侵害させかねません。介護の専門職として、高い意識と倫理感を持ち続けなければならないのです。

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